世界傑作文学100選

20世紀・ヨーロッパ

ダロウェイ夫人

作者
ヴァージニア・ウルフ
国・地域
イギリス
言語
英語
成立
1925年

あらすじ

ウルフの円熟を示す長編であり、ロンドンの一日を通じて複数の意識が重なり合う。クラリッサ・ダロウェイは夜会の準備をしながら青春の選択を回想し、戦争神経症に苦しむセプティマスは現実の裂け目を見つめる。都市の鐘は時間を刻み、通行人の思念が波紋のように広がって互いに触れ合う。物語は事件よりも感覚の連鎖を重んじ、現在・過去・想像が自在に交錯する。クラリッサの“生の肯定”は、セプティマスの死と対位法をなし、個の孤独を抱えた共同体のかたちを照らし出す。ウルフは意識の流れを透明なリズムで紡ぎ、言葉が静かに世界を照らす瞬間を捉える。日常の表皮を剥ぐことで、存在の脆さと輝きが同時に立ち上がる作品である。

豆知識

  • 物語は1923年6月のある水曜日、たった一日の出来事で、ビッグ・ベンの鐘が時の区切りとして何度も鳴り響く。
  • 当初の仮題は「The Hours(時間)」だった。マイケル・カニンガムはこれを題にした小説『めぐりあう時間たち』(1998年)を書き、映画化もされた。
  • クラリッサ・ダロウェイは、ウルフの最初の長編『船出』(1915年)にも脇役として登場している。

日本語で読むなら

  • 『ダロウェイ夫人』土屋政雄訳光文社古典新訳文庫
  • 『ダロウェイ夫人』丹治愛訳集英社文庫

この作品が好きなら

  • 灯台へ(ヴァージニア・ウルフ)

    同じウルフの代表作。意識の流れの手法をさらに推し進めた

  • ユリシーズ(ジェイムズ・ジョイス)

    こちらはダブリンの一日。ロンドンの一日を描くダロウェイ夫人と並べて読まれる

  • 失われた時を求めて(マルセル・プルースト)

    記憶が現在に割り込んでくる語りが共通

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