ダロウェイ夫人
ウルフ
イギリス · 英語
1925
あらすじ
ウルフの円熟を示す長編であり、ロンドンの一日を通じて複数の意識が重なり合う。クラリッサ・ダロウェイは夜会の準備をしながら青春の選択を回想し、戦争神経症に苦しむセプティマスは現実の裂け目を見つめる。都市の鐘は時間を刻み、通行人の思念が波紋のように広がって互いに触れ合う。物語は事件よりも感覚の連鎖を重んじ、現在・過去・想像が自在に交錯する。クラリッサの“生の肯定”は、セプティマスの死と対位法をなし、個の孤独を抱えた共同体のかたちを照らし出す。ウルフは意識の流れを透明なリズムで紡ぎ、言葉が静かに世界を照らす瞬間を捉える。日常の表皮を剥ぐことで、存在の脆さと輝きが同時に立ち上がる作品である。
豆知識
1.
1925年刊行。ロンドンの1日を通してクラリッサ・ダロウェイの意識を描く。
2.
ビッグ・ベンの鐘の音が時間構造の要として繰り返し登場する。
3.
当初の仮題は『The Hours』で、後年の同名小説・映画に影響を与えた。