20世紀・ヨーロッパ
特性のない男
- 作者
- ロベルト・ムージル
- 国・地域
- オーストリア
- 言語
- ドイツ語
- 成立
- 1930–1932年
あらすじ
ローベルト・ムージルの『特性のない男』は、オーストリア=ハンガリー帝国末期の社会と人間を精緻に描いた未完の大作である。主人公ウルリヒは「特性のない男」として、才能や知識を持ちながらも決定的な自己を欠いている。物語は帝国崩壊前夜の「並行行動」と呼ばれる祝典準備を背景に、政治、文化、科学、性愛など多様な要素が交錯する。ムージルは細密な心理描写と哲学的考察を融合し、近代社会におけるアイデンティティの不安定さを浮き彫りにした。未完であるがゆえに、その断片性が近代の不確実性を象徴する。『特性のない男』は20世紀文学における知的実験であり、人間存在の流動性を問い続ける作品である。
豆知識
- ムージルは20年以上この作品に取り組んだが、1942年に亡命先のスイスで亡くなり、未完に終わった。
- 物語は、オーストリア皇帝の即位70周年を祝う「平行運動」という計画をめぐって進む。記念の1918年は、実際には帝国崩壊の年になった。
- 作中のオーストリア=ハンガリー帝国は「カカーニエン」と呼ばれる。「帝国・王国」を表す略号k.k.をもじった呼び名である。
日本語で読むなら
- 『特性のない男』加藤二郎訳松籟社・全6冊